| 屋根串の崩落も修理されていない。まだ住宅ローンの残っているでありましょう、新しげな家でさえ放置されたままなのだ。「放射能汚染で、いつ帰れるかわからないし、帰ってこられないかもしれない。是じゃあ修理できないよ」と会長が言った。人が住まなくなっただけでも家は崩壊していくものだ。地震に襲われ、放射能に汚染されて、仲間であるはずの人間に、窓をたたき割られて空き巣にまで荒らされる。無人の町中にあって、「何と悲しい事か」師匠が目頭を抑えた。あの日、着の身着のままで避難させられた、住民たちの「無念の墓標なのね」そう見えても仕方ないと、弥生は黙とうした。 今度は、県道36号線を富岡川沿いに滝川ダムに出た。秋ならば紅葉の名所で有名な自然豊かな峡谷だが、ゴジラからは、20キロ圏内に位置していたためか、一台の車と出会う事も無く、川内村役場まで来てしまった。 「もう私、心が折れそうだわ」弥生の言葉に、皆黙って頷いた。 |
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