| 「もう帰るぞ!」(この男は、連れてくるべきではなかった)師匠は苦虫を噛み潰したような顔で号令した。 帰り道は、県道35号線で一旦大熊町へ引き返して、さらに富岡町まで南下した。 国道沿いよりも住宅があって、住民に会える可能性が高いから、と言うのが理由だ。農業地帯の地方都市でも、幾軒も建ち並ぶ住宅街もあったが、ガラス戸にはカーテンがひかれ、人気のない無人の街だった。 そればかりか、窓ガラスの割れている住宅が殆どだった。おそらく、空き巣の被害なのだ。先程の検問でも、「今この辺をうろついているのは、泥棒だけだ。」と言って、疑いの眼差しを向けられたのだった。 |
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